皆さんは不倫の実態をご存じですか?
JEX JAPAN SEX SURVEYの調査によると、浮気・不倫経験があると答えた男性は67.9%、女性は46.3%に上るそうです。
ニュースでも芸能人の不倫が話題になり、不倫が報じられなかった年は見たことがありません。
不倫はいけない。多くの人がそう思っているはずなのに、なぜ不倫はなくならないのでしょうか?
実は近年の研究で、不倫に関する遺伝子が見つかってきました。
遺伝子教室第二回では、不倫にまつわる遺伝子について紹介したいと思います。
一夫一婦制のプレーリーハタネズミで見つかった不倫遺伝子
不倫遺伝子の存在は、プレーリーハタネズミを用いた実験で明らかになりました。
プレーリーハタネズミは、一度パートナーができると、生涯その相手と添い続ける「一夫一婦」をとる哺乳類です。
19993年に有名な科学誌「ネイチャー」に、バソプレシンの活性が一夫一婦制にかかわりがあると、発表されました。
バソプレシンとは、利尿運動を妨げる「抗利尿ホルモン」と呼ばれており、人類を含む多くの動物では、アルギニンがくっついた「アルギニンバソプレシン」という形で存在します。
利尿運動を妨げる以外にも、以下の作用があります。
- 相手に対する親切心
- セックスに関する情報への感受性
- 男性が家族を守るように動機づける
プレーリーハタネズミは交尾すると、その最中にオスの脳内ではアルギニンバソプレシンが放出され、交尾後に他のメスと関わらなくなることがわかりました。
一夫一婦制のプレーリーハタネズミと乱婚型のサンガクハタネズミでは、アルギニンバソプレシンを受け取るAVPR(Arginine vasopressin receptor)の密度に違いがあり、プレーリーハタネズミのほうが、AVPRの密度が高い、すなわちアルギニンバソプレシンを受け取りやすいことがわかりました。
つまり、アルギニンバソプレシンの感受性の違いが、一婦一夫制か乱婚かを決めていたのです。
2人に1人が持つ不倫型AVPR1A遺伝子とは
AVPR1Aは、アルギニンバソプレシンを受け取るAVPRの生成に関わる遺伝子です。
AVPR1Aの遺伝子を操作することにより、乱婚型のサンガクハタネズミを、一夫一婦型にできることがわかっています。
この遺伝子はヒトでも見つかっているのです。
そして人の場合、このAVPR1A遺伝子の中にある特定の型「アリル334」を持っている人は、持っていない人よりも不倫しやすいことがわかっています。
2008年のカロリンスカ研究所のワラム博士らの研究によると、アリル334をもつ男性ほど、浮気率や未婚率が高くなり、親切心が低くなる傾向があることがわかっています。
また、フィンランドで7400人の双子を対象に行わられた遺伝子研究プロジェクトでは、バソプレシン受容体が変異した遺伝子を持つ女性の浮気率が極端に高いことがわかっています。
引用:文春新書 『不倫』
バソプレシン受容体以外にも、オキシトシンやドーパミンの感受性関与する遺伝子も不倫行動に影響を与えます。
まとめ
- アルギニンバソプレシンの感受性の違いが不倫行動に影響を及ぼす
- 人の場合、AVPR1A遺伝子の中にある特定の型「アリル334」をもつ人は持たない人に比べて不倫しやすい
- バソプレシン受容体以外にも、オキシトシンやドーパミンの感受性関与する遺伝子も不倫行動に影響を与える
参考図書
文春新書 『不倫』 中野信子 著