satori遺伝子。
この名前を聞いて、どんな働きをすると思いますか?
悟りを開くの?
賢者になるの?
お坊さんになる?
多くの人がそう思ったのではないのでしょうか?
でも実は、この遺伝子に変異があると、名前からは全く想像できないことが起こるのです。
それでは、悟り遺伝子の真の正体を解説します。
なぜ見つかった、satori遺伝子
いきなりですが、satori遺伝子は何の動物から見つかったと思いますか?
実験動物で定番のマウス?
それとも、悟りというぐらいだから人?
実は、ショウジョウバエから見つかった遺伝子なのです。
それも、性行動に関する研究で見つかりました。
ちなみにですが、オスのショウジョウバエは求愛するとき、メスに近寄って、片側の翅を激しく振動させます。この翅の振動音が、メスの性欲を増加させることから、求愛歌(ラブソング)と呼ばれるそうです。
なんだかオシャレですね。
話がそれてしまったので、本題に戻りましょう。
遺伝子の研究では、わざと人為的に突然変異を起こし、普通の個体とは見た目や行動が異なるものを選別します。そして、普通の個体とどこの遺伝子に違いがあるのかを調べることで、原因になっている遺伝子を特定します。
そしてある時、求愛行動を示さなくなる個体が見つかり、雌にほとんど興味をもたなくなり、性欲がなくなった様子から“悟り”と命名されました。
こうしてsatori遺伝子が見つかったのです。
悟りを開くわけではなく、アレになる⁉
求愛行動を示さなくなったsatori突然変異体ですが、後の研究である条件下では求愛行動するようになることがわかったのです。
その条件とは何なのか?それは・・・
オス同士をペアにする
実は、satori突然変異体は悟りを開いたのではなく、同性愛者になってしまったのです。
satori遺伝子の真の働きとは?
satori突然変異体は悟りを開くのではなく、同性愛者になる。
では、satori遺伝子の機能とは何なのか?
それは、satori遺伝子は神経構造をオス化させるのか、メス化させるのかを決めるのに関わっています。
遺伝子からはタンパク質が作られるので、satori遺伝子からはsatoriタンパク質が作られることになります。しかし、オスの場合のみsatoriタンパク質が作られ、メスでは作られません。
このsatoriタンパク質が、神経構造をメス化する作用を抑制することで、神経構造がオスになるのです。
つまり、satori遺伝子に変異があるハエでは、satoriタンパク質が作られなくなったことで神経構造のメス化を抑制できなくなり、体はオスでも神経構造がメスになってしまうのです。
まとめ
- ショウジョウバエの性行動に関する研究で、求愛行動を示さなくなったハエからsatori遺伝子がみつかった
- satori突然変異体は悟りを開くのではなく、同性愛者になる
- satori遺伝子は神経構造をメス化を抑制することで、オス化を促す