ポケモンのピカチュウを連想してつけられた遺伝子があります。
その遺伝子の名前はピカチュリン。
ピカチュウと言えば、黄色のすばっしこいイメージで、10万ボルトなどを使うの電気タイプのポケモンですね。
皆さんはここからどんな働きがあると思いますか?
実はピカチュリンは動体視力に関わっているのだとか・・・
では、その真相を解説していきます。
ピカチュリン遺伝子が見つかった経緯とは?
ピカチュリンは、網膜における神経回路の形成に関する研究で見つかりました。
つまり、物を見るときに、眼球の網膜という場所で、どのように神経回路が形成されるのかということです。
ここで一度、物が見える仕組みについて簡単に説明します。
物が見える流れは以下の通りです。
- 光が角膜を通過
- 虹彩で光の量を調節
- 水晶体でピント合わせ
- 水晶体で屈折した光は硝子体を通過
- 網膜にぶつかり映像化
- 映像は視神経を通り、脳に伝達
まとめると、
眼球では、受け取った光の量やピントを調節して網膜に映像を映し、これを神経系を通じて脳に伝達するということになります。
網膜には光の明るさや色合いを感じとる視細胞が密集しています。
この視細胞と視神経につながる仕組み(⑤と⑥に該当)がよくわかっていませんでした。
そこで、視細胞と視神経がつながる時に働く遺伝子について調べました。
すると、ある遺伝子に変異があると、以下のことが起こることがわかりました。
- 神経細胞が伸びずに視細胞と接続できない
- 生後3か月のマスでは、視細胞から神経細胞の伝達に時間がかかる(通常時の約3倍)
- 動体視力が低下する
光や電気、素早い動きという特徴からポケットモンスターのピカチュウを連想して、この遺伝子に、「ピカチュリン」という名前が付けられたそうです。
ちなみに、論文が掲載される雑誌の表紙にピカチュウを載せようと、版権元と交渉したのですが、ダメだったそうです。
ピカチュリン遺伝子の働き
見つかった経緯にも記載した通り、ざっくり言うと、ピカチュリンの働きは視細胞と視神経の接続と動体視力に関わっています。
また、分子発生学研究室 古川ラボのホームページでは、ピカチュリンの働きについて以下のように記載されています。
ピカチュリンがジストログリカンと結合することによって、視細胞—双極細胞間のシナプス形成分子として機能することを見出しました
専門用語のオンパレードなので、かみ砕いて説明します。
網膜には、光を受け取る視細胞と双極細胞と呼ばれる神経細胞が存在します。
視細胞で受け取った光を電気信号に変えて双極細胞に伝達することで、人は見たものを脳で認識できるのです。
しかし、視細胞と双極細胞は直接繋がっているのではなく、微妙に隙間があります。
この視細胞と双極細胞の接続部をシナプスと言います。
ピカチュリンは、ジストログリカンと呼ばれる糖タンパク質と結合し、視細胞と双極細胞のシナプスの形成に寄与しているのです。
まとめ
- ピカチュリンは、網膜における神経回路の形成に関する研究で見つかった
- 光や電気、素早い動きという特徴からポケットモンスターのピカチュウを連想して、「ピカチュリン」という名前が付けられた
- ピカチュリンは、視細胞と視神経の接続と動体視力に関わっている